心臓から送り出された血液は、動脈を流れて全身に運ばれます。健康な動脈は柔軟で弾力性に富んでいますが、加齢や生活習慣病が原因で動脈機能が低下し、弾力性が失われて硬くなると動脈硬化を引き起こす可能性があります。動脈硬化が進み、血液をうまく送り出せなくなると、必要な酸素や栄養が行きわたらず、心筋梗塞など深刻な病気を引き起こすリスクが高くなります。
イランイラン精油の芳香浴が動脈機能の維持・改善に影響を及ぼすかについて確認した研究データを紹介します。
実験方法
健康な成人男女11名(男性8名、女性3名)を対象として、30分間あおむけの姿勢で安静にした後、通常の空気またはイランイラン精油と空気が混合した気体を30分間吸入。その後、安静時収縮期血圧、脈波伝搬速度などを測定しました。
なお、被験者は通常の空気とイランイラン精油と空気が混合した気体の両方の吸入を、少なくとも3日以上の間隔を空けてそれぞれ実施し、両方の試行順は無作為にふりわけました。
実験結果
【収縮期の血圧】
通常の空気を吸入した場合(コントロール)と比較して、イランイラン精油と空気が混合した気体を吸入した場合のほうが、収縮期血圧に低下が認められました。
※収縮期血圧とは、心臓が収縮して血液を送り出すときの血圧で、最も高くなる血圧を示します。
【脈波伝播速度】
通常の空気を吸入した場合(コントロール)と比較して、イランイラン精油と空気が混合した気体を吸入した場合のほうが、脈波伝播速度に顕著な低下が認められました。
※脈波伝播速度とは、心臓からの拍動が伝わる速度で、血管の硬さを見る検査の指標となります。動脈硬化が進んだ血管ほど、拍動は速く伝わります。
イランイラン精油を吸入することで、副交感神経が優位となり、収縮期血圧の低下をもたらし、脈波伝搬速度の顕著な低下につながったのではないかと考えられます。
この結果から、イランイラン精油の芳香浴が、動脈機能を改善する可能性が示唆されました。
研究ノート「一過性の精油環境が動脈スティフネスおよび血管内皮機能に及ぼす影響.三浦哉、杉野恵、越智玲衣.アロマテラピー学雑誌、Vol.15, No.1, 122-126, 2015」より引用